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Tips ■調整レイヤーとレイヤーマスクを駆使した作業作品例@2009/02/11
使用ツール:SAI(線画作成工程のみ)/Photoshop7.0(Elementsでは再現不可能な工程があります)

※レイヤーマスクの利点
一時的な非表示/表示には圧倒的に便利です。
又、マスクを作成した範囲も選択範囲として用いる事が可能です。
単純に白と黒だけで操るレイヤーマスクは、手入れ/修正も比較的容易な場面がありますので、どちらかといえば「優れた表現」のベクトルよりも「より良い作業工程」のベクトルに作用する機能に思います。
線画
手順1:線画
今回はSAIでラフを起こし、PC上で線画を作成しました。
手ぶれ補正S-3の鉛筆で描画しています。
あくまでも個人の好みですが、本体と顔を別々のレイヤーに作成してあります。

背景マスク
手順2:背景マスク
SAIの線画ファイルをPSD形式で保存し、以降Photoshopで作業します。
いつもと逆で今回は塗らない範囲を先に作っています。
レイヤー全面を塗りつぶし、人物範囲をレイヤーにマスクを追加し抜きます。
解りやすいように塗らない範囲を青にしてみました。
マジックワンドで選択>塗りつぶし、細かい部分はパスで塗ったり削ったりしています。

ベタ入れ
手順3:ベタ入れ
今回は最初にモノクログレーで作業を行います。
漫画原稿等の白黒絵のような雰囲気で仕上げていきます。
まずは要所に黒(RGB:#000000)を入れてメリハリをつけます。
線に強弱をつけるイメージで、今回は若干控えめにしてあります。

影塗り開始
手順4:影塗り開始
50%グレー(RGB:#808080)で全面を塗りつぶし、マスク上だけで作業します。
塗りつぶした後マスクを黒(RGB:#000000)で塗りつぶして一時的に非表示と同じ状態にしておき、
白(RGB:#ffffff)で塗るとグレーが現れる感じです。
レイヤーマスク上では白黒の濃淡を表現する事で、ただの50%グレーにも綺麗な濃淡を適用出来ます。
パスで選択範囲を作成し、A:グラデーションツールで大胆に/B:エアブラシで繊細に 影をつけていきます。

影塗り完了
手順5:影塗り完了
影が塗り終わった状態です。
濃淡が見えると思いますが、これは全て1レイヤーのマスク上での表現です。

ハイライト
手順6:ハイライト
モノクロ作業の終わり、ハイライトを入れて一段落です。
この段階で加工すると印刷向けグレーイラストとしても応用出来ます。
(私はいつもサークルカット等は似たような手順で作成し、最終的に必要であればこの後2値化します。)

>追加講座:2値化はこちらをご覧ください。

Take me high
サイト内にあるこちらの作品も、似たような手順で作成されたものです。併せてご覧ください。

レイヤーマスクで可能な調整
手順7@ex:レイヤーマスク上で可能な調整
基本的には白黒で塗る事でしか濃淡を付けられないレイヤーマスク上ですが、ここでは「覆い焼きツール」と「焼き込みツール」も使用可能です。
それらも併用する事でより濃淡の幅を自在に操る事が可能です。
又、「水滴ツール」「指先ツール」の使用も可能です。
ぼかし・グラデーションなど好みの表現で細部を仕上げると良いと思います。
加えて一部に限られますが、フィルタも適用出来ます。
レイヤーマスク上で「表現手法>雲模様1」を適用すると面白い効果が出せます。

調整機能による着色
手順8:調整機能による着色
今回は彩色に個別の色を作りません。全てRGB値の調整によって色を付けていきます。
使用する機能はレイヤーウインドウ下部:左から4番目「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」から選択します。
レベル補正…RGB値を棒グラフ的に操作します。
トーンカーブ…RGB値をx,y軸操作します。
カラーバランス…RGB値を横スライダで操作します。
明るさ・コントラスト…RGB値の輝度を操作します。
色相・彩度…色相/彩度/明度をそれぞれ操作します。
メインメニュー@画面上部の「イメージ>色調補正」側と違うのは調整機能を直に適用せず、被せるように配置出来る点です。
「イメージ>色調補正」はアクティブレイヤーに直に作用させ、繰り返しのやり直しには適していない為、あくまでも最終調整や割り切った調整で利用するのが良いでしょう。
各々調整レイヤーにはレイヤーモードが適用出来ます。併用で更に細かな調整が出来ますので、色々試してみてください。
レイヤーの透明度も適用可能です。調整した色が濃すぎたかな?という時に透明度を適用しています。

又、今回は加えて以下の機能も併用しています。
色域指定…指定した色の範囲で選択範囲を作成する機能です。
こちらはメインメニュー@画面上部の「選択範囲>色域指定」から実行します。

話を作例に戻しますと、まずは全体のイメージカラーとして調整しました。
使用調整レイヤーは「トーンカーブ」、R値を強め/B値を控えめ に適用しています。

調整機能による着色2
手順9:調整機能による着色2
次に、個別に調整していきます。調整レイヤーのマスクで適用範囲を決めてあります。
今回は大まかに[髪/金具/服/宝石/肌]で分けています。
肌は手順8を基準@そのままに、その他パーツは「トーンカーブ」で大きく色を変化させて着色しています。

調整機能による着色3
手順10:調整機能による着色3
ハイライトも調整レイヤーで入れます。
この場合は「明るさ・コントラスト」で一度全体の明度を上げてしまい、それをマスクで一時的に消去してから白で描くイメージです。
影入れと同じイメージですね。
尚、作業中のレイヤーはこんな感じになっています。

線画トレス
手順11:線画トレス
線画が黒のままでも趣がありますが、今回は着色をやや淡めにした都合で線画もマイルドに調整します。
線画レイヤーにクリッピングでグループ化させ焦げ茶色で塗りつぶしたものを組みました。
同様に分かれていた顔線画、ベタレイヤーにも色を載せています。
その上でベタレイヤーに関しては色差の大きい部分は浮きが気になるので、マスクで消去しています。

背景消去
手順12:背景消去
背景に見やすさの意味で置いていた青をここで非表示にしてみました。
キャラクターの塗りが完成しています。

背景調整
手順13:背景調整
最後の仕上げ、全体イメージを整えるための背景作成作業に移行します。
全体的にアナログなカラーリングに仕上がりましたので、背景も主張しすぎない色で纏めたいと思います。
先に置いていた青の背景レイヤーを「色相・彩度」で好みの色に変更しました。
レイヤーセットで「着色」「線画」「下地」と区分けしレイヤーを整理しています。
又、「線画レイヤーセット」を複製>セット内を結合したものを作り、フィルタの「ぼかし>ぼかし(ガウス)」を3.0で適用/色相・彩度で色味を調整したものをソフトライトで重ねています。
その他最終的なまとまりを考えて微調整も加えました。

背景完成
手順14:背景完成
アナログなカラーリングに合わせた背景イメージという事で、素材をコラージュしてみました。
使用素材はMdN[ざらざら素材集―アナログデザインパーツコレクション638]です。
手軽にアナログでオリエンタルな雰囲気に仕上がったかと思います。

red-retake.jpg
サイト内にあるこちらの作品も、似たような手順で作成されたものです。併せてご覧ください。

(素材集は気に入ったものを色々購入しています。お値段はそこそこ掛かりますが、ゼロから描くよりは遥かに楽なのと、自分では持っていない表現が容易な点で重宝しています。)
個人的に「使えるものは何でも使う」主義なので(´д`)ただ上手く使わないと駄目ですが!
CD-ROMソフトの素材集もいいのですが、どちらかと言うとそれらは写真でリアルなものorコミカルなイラストカットのものが多いので、工夫しないでイラストに用いると浮いてしまう場合もあります。
お値段的なものも含め(´д`;)見て読んで楽しめる本の形態が個人的に好きです。

背景はキャラを邪魔しない程度に色味も抑えていますが、結果メリハリは出たのではないかと思います。

今回の作例は色数が少ない絵という事で、このやり方が楽な面がありますが、もっと色数・パーツの多い絵には場合によって不向きかもしれません。
又、この作例はあくまでも「Photoshopの機能を知る基礎」と「応用に適した機能を知る事で表現の幅を広げる」意味での講座になります。
CGの作業で必要な事は「思うイメージを作り上げる」上で「労せずに作業出来る」とか「何度でも調整が利く」とか「納得がいくまで適した調整が出来る」事だと思います。
絵柄や上手い下手というのとは意味合いが異なりますし、同じ工程を用いたからといって個性を殺すような事があってはならないと思います。
ただ、知らないと勿体無いという点は大いにあると思いますので、お手元の絵や写真で各種調整機能を是非色々試してみてくださいね。

以上、お疲れ様でした!

ex:彩色バリエーション
手順15@ex:彩色バリエーション/パーツ別に塗り分けた通常時の塗り
おまけで彩色バリエーションを作成してみました。
影やハイライトの形と範囲は上記作例から流用しています。線画トレスはそのままです。
色味を変えるだけで印象が変わるのが良く解ると思います。